『四月十三日』
微睡みの中、壁を挟んだむこう側から微かに声が聞こえる。
何を話しているのかもわからず、ただただぼんやりと、僕はそれを聞いている。
薄明かりの、目を閉じた赤い闇の中で輪郭の無い声が漂う。
懐かしい声。
これは誰の声だろう。
まるで水の中のように、ゆらめいて、泡のように消えていく。これは誰の声だろう。
不確かな闇の中、道標のように。それは遠い記憶。それは僕の中だけの記憶。
壁のむこう、戸のむこう、ドアのむこう、静かな喧騒は終わらない。
僕はドアを開けられず、ここにいてはならぬとわかっていながらも、立ち尽くしその声を聞いていた。
そうだ。
煙のように、陽炎のようにそれはまた、今日も微睡みの中で姿を現す。
初音瞭
☆★チケットはこちらから☆★
Sol.星の花 旗上げ公演「Voice in the Wind」ーヴォイス・イン・ザ・ウインドー
2017/6/2(金) 19:00 ~ 2017/6/4(日) 17:00
高円寺 明石スタジオ
0コメント